仕事はもちろんのこと、勉強に趣味に使えるコワーキングスペースの魅力を紹介しています
コワーキングスペースとは
近年、全国各地で増加しているコワーキングスペースですが、「名前は聞いたことがあるがどんなところなのか分からない」という人も多いのではないでしょうか。
コワーキング(Coworking)とは、いろいろな人が一緒の空間で同時に仕事をするという意味で、それを行う場所がコワーキングスペースです。
カフェはコーヒーなどドリンクを楽しむところですが、実際には仕事をしている人をたくさん見かけます。コワーキングスペースは非常に簡単に言えば「仕事専用のドリンクが売られていないカフェスペース」のようなイメージです。カフェのようにドリンクはありませんが、仕事をするための場所が提供されているのです(最近はフリードリンク制のコワーキングスペースも増えていますので、カフェよりお得なのかもしれません)。
カフェで仕事をしていると「そろそろ帰れと声をかけられるかも・・・」「ドリンクのお替りをしなければ・・・」など、スペースを使い続けていることに対して罪悪感を持つことが多いでしょう。しかし、コワーキングスペースは「スペースを借りている(使用する権利にお金を払っている)」のでカフェのように気を揉むようなことはありません。しかも、仕事しやすいように環境が整備されているという特徴があります。
ほとんどのコワーキングスペースで共通している設備には、フリーWiFi、電源コンセントがあります。その他、フリードリンク(コーヒーなどが飲み放題)といったサービスを提供しているとこも珍しくありません。
スペースもコワーキングスペースごとに特徴があります。
スペースのカラーという点では、今風のおしゃれなカフェと見間違えるほどに綺麗に整備されたところもあれば、オフィスの一角をコワーキングスペースとして活用しているところもあります。
空間配置という点では、複数人が同時に作業をできるように大型のミーティングテーブルを設置しているところもありますし、パーティションなどを設置して一人で集中して作業することができる空間を提供しているところもあります。また、テレフォンルームやミーティングルームなど用途に応じた専用の部屋を設置しているところも見られます。
営業時間は早朝から夜間というところが多く、契約内容によっては24時間利用できるところも珍しくありません。ドロップインという一時利用が可能なところのほか、月額で長期の利用を前提としているところも見られます。
全国各地でコワーキングスペースが増えた結果、さまざまなスタイルのコワーキングスペースが登場しており、利便性は高まっていると考えて良いでしょう。
長野県のコワーキングスペースについて
現状
長野県はコワーキングスペースが他県に比べて比較的多いと言われています。長野県は土地が広いということも理由の一つですが、他にも「移住」や「テレワーク」などを長野県が積極的に推進していたため、コワーキングスペースが多く作られたと考えてよいでしょう。

某加盟店に登録している数は、2021年時点で長野県に17店舗あります。これは、埼玉県14店舗、千葉県12店舗よりも多く、東京都113店舗、大阪府31店舗、神奈川県25店舗に次ぐ第4位の店舗数です。
加盟していないコワーキングスペースも含めると3倍程度の店舗数が考えられるため、長野県には50店舗近くのコワーキングスペースが存在するといえそうです。
ただし、コワーキングスペースというのは、一度作られればずっと存在するというものでもありません。特に自治体の主導で開設・運営されているものは、予定された期間の経過や役割の終焉に伴って運営も終了することが目立ちます。
長野市のコワーキングスペース
長野市のコワーキングスペースに関する統計データはありませんが、コワーキングスペースの数は10店舗程度あると考えられます。長野県では、長野市と松本市が居住人口も多いため、結果的にコワーキングスペースの数も多いと言えます。
規模感
規模は様々ですが、比較的大型の施設が多いようです。雑居ビルの一室をコワーキングスペースとして運営しているようなところは少なく、ビルのワンフロア、工場一棟、ビル一棟などを使って大型の施設運営を行っているところが見られます。
その他、一戸建て(住宅)を改修のうえコワーキングスペースとして利用したり、自社内の一角をコワーキングスペースとして貸し出したりしているようなケースも見受けられます。
行政自体が運営しているコワーキングスペースは長野市には見当たらず、過去に民間事業者のコワーキングスペース開設を後押しするよう補助金による支援が長野市より行われていた経緯があり、その時代に開設されたコワーキングスペースが今も見られます。
長野市のコワーキングスペースは、経営的にそれほど簡単とは言えないようで、既にいくつかのコワーキングスペースがクローズした事実もあります。ここ数年は新しく開設される店舗よりも減少している店舗数の方が多いかもしれません。長野市民にとってコワーキングスペースはまだまだ一般的な存在であるとはいえず、ニーズは潜在的であると言えます。
長野市以外に目を向けてみると、須坂市や中野市には行政が運営するコワーキングスペースと民間事業者が運営するコワーキングスペースの両方が存在します。また、上田市には民間事業者運営によるコワーキングスペースが見られます。
コワーキングスペーストレンド
最近のトレンドとしては、カフェのようなコワーキングスペースよりも、「シェアオフィス」と呼ばれるスタイルが人気となっています。
新型コロナウイルス感染症が終息し、ポストコロナ時代においてはリスキリングやキャリアアップなどで資格取得を目指す社会人が増えています。資格試験に突破するためには中長期での勉強が必要で、特に自習が要になってきます。
近年、コワーキングスペース利用者の中心は自習をする社会人へと移行してきており、自習室としての機能を備えたコワーキングスペースが人気なのですが、どちらかというとコワーキングスペースというよりは「シェアオフィス」に近いスタイルが主流です。コワーキングスペースのように会話をしながら仕事をしたり、人脈を拡大したりという目的よりも、自分の世界で集中して自習したいというニーズが強いため、パーティションなどで区切られた集中空間が好まれる傾向にあります。コワーキングスペース運営者も、サイレントルームや自習専用ルームなどを設け、資格試験などの勉強に活用できるよう配慮しているところが目立ってきました。
もともとコワーキングスペースの主要顧客層には「高校受験生」や「大学受験生」といった、勉強組が含まれていました。1月以降、本格的な受験を前に、図書館などの行政が運営する施設は朝から受験生による場所取りが激しく、そこから漏れると勉強する場所に難儀するということから、受験生の一定数はコワーキングスペースを有料自習室として利用していました。最近は、高校受験や大学受験だけではなく資格受験へと裾野が広がったものと言えます。
実際、難関の資格試験に挑戦するため仕事を辞めて勉強に専念する社会人は珍しくありません。司法試験や司法書士、公認会計士や税理士、行政書士や社会保険労務士などは仕事を辞めて勉強に専念する社会人受験生が多く、そのような受験生からすれば自宅で勉強をするよりもコワーキングスペースやシェアオフィスを利用した方が時間にメリハリもでき、集中できるため人気となっているわけです。
コワーキングスペースは今後、学生などの受験生に加えて、社会人向けの自習室としての役割を担うことになることが予想されるところです。
コワーキングスペースの種類
全国にはさまざまなコワーキングスペースが登場しています。
どのような切り口で分けるのかについては、いくつかの方法がありますが、ここではカオスマップによる分類に応じて、それぞれの特徴を説明していきます。
※コワーキングサービス関連カオスマップとは、株式会社AnyWhereはコワーキングスペースの価値を可視化したもの

コワーキングサービス関連カオスマップ【18カテゴリ】
コワーキングサービス関連カオスマップでは、コワーキングサービスを18のカテゴリで分類していることから、それぞれについて見ていきます。
1.シェアオフィス
コワーキングスペースの中では比較的多く見られるもので、共同オフィスのこと。一つのオフィスを複数人で共有しながら、自分の好きな仕事を行うことができる。所属組織や仕事内容がバラバラな人々が同一空間で仕事をしており、仕事を行ううえでのスペース以外にビジネスアイテムなどが揃えられていることが多い。
具体的には複合機(コピー機)など。また、住所を使うことができるケースも多く、法人登記や郵便物の受け取りなどのオプションを選ぶこともできるようになっている。働く場所というよりも、簡易的なオフィスというニュアンスの方が近い。
2.ワーク環境重視
ワークスペースとしての機能性を高めたコワーキングスペースを指す。パーティションで区切られ集中できる個室が準備されていることや、オンラインミーティングや電話会議を安心してできるテレフォンブースなど、用途に応じたスペースが機能ごとに準備されている。
一方で、最新のカフェスタイルなどリラックスして仕事ができる空間、あえて無機質で集中できる従来型のオフィス空間など、さまざまなスタイルのスペースを準備することで快適かつ集中して仕事ができる環境を提供している。パソコンモニターなどの貸し出しにも対応しており、フリードリンクといったサービスも提供されることが多い。
3.オープンイノベーション
コワーキングスペースの基本的な思想を汲む、共同作業を促すスペースがメインとなっているコワーキングスペースのことを言う。大きなミーティングデスクが配置されており、複数人がテーブルに集まって作業することができるのが大きな特徴で、活発なコミュニケーションによる反応からビジネスアイデアが創造され、共同プロジェクトが生まれることや、ネットワークの広がりによる人脈形成および人脈拡大によってビジネスを発展させられる可能性を秘めている。
コミュニケーションを促すことを目的に、コミュニケーションマネージャーと呼ばれる人を結びつける役割を持つ人物を配置したり、定期的なイベントによって交流を促すといったりした取り組みが行われることが多い。
4.創業支援
小規模な事業(スモールビジネス)を支援する機能を充実させたコワーキングスペースのこと。コワーキングスペースには人と情報が集まる傾向にあり、これから創業したいという人が人脈や情報を求めてやってくる。コワーキングスペース運営者自体が起業家としての側面を持っていることもあって、創業相談などに対して向き合いやすい。
地方自治体が開設するコワーキングスペースは手厚い創業サポート機能が展開されていることが多く、中小企業診断士などの専門家による個別相談や実務家によるセミナーなどが定期的に開催されている。
コワーキングスペースよりもシェアオフィスとしてのスペース利用の方に力点が置かれていることが多い。
5.インキュベーション
より突っ込んだ創業支援を展開するコワーキングスペースのことで、インキュベーションを前提とした「施設」というのが一般的である。
情報提供などを主体とした創業サポートではなく、実際に取り組む中で生じた課題を解決しながら結果を出し、創業成功へと導く助走を後押しするところに特徴がある。多くは専用の部屋、固定の場所を提供し、創業予定者もそこに一定期間入居しながら実際に創業し、創業後の支援も一定期間受けることが可能。
最近の主流ともいえる「伴走支援」が行われ、創業者からすれば面倒見が良い手厚いサポートを受けることができる。地方自治体が運営するコワーキングスペースによく見られるタイプである。
6.ネットワーキング
利用者同士のつながりを重視した運営を行っているのがネットワーキング型のコワーキングスペースである。コワーキングマネージャーと呼ばれるスタッフが媒介役となり、利用者同士を結びつけていく。それ以外にも、頻繁に開催されるセミナーや交流会などのイベントを通じて利用者自らが自分にとって必要な人・刺激的な人との出会いを実現していく。
利用者同士のつながりによって新しいビジネスが創造されたり、利用者のビジネスが人との結びつきによって一気にブレイクするというような反応も起こりやすく、狙って得ることよりも偶然的に得ることのプラスに魅力がある。
コワーキングマネージャーのスキルによってコワーキングスペースの魅力度に差がつくというのもネットワーキング型の大きな特徴である。
ビジネスや価値観を通じて人とつながる場。交流イベントやカンファレンスなどを通して人と人とのつながりを創出し、コミュニティづくりを行なっている。
7.グローバル交流
大都市圏に見られるコワーキングスペースのタイプで、仕事という範囲を超え、文化交流などを含めた国際的なコワーキングスペースのあり方。単純に考えれば、日本人だけではなくさまざまな国のワーカーがコワーキングスペースを利用している状態であるが、そのためには外国語に対応したスタッフの配置や施設内の整備などさまざまな対応が求められる。これら外国人向けの整備が整った状態が最低ラインで、それありきで定期的なイベントを開催するなど発展させ運営しているコワーキングスペースもある。
日本以上にコワーキングスペースが普及している国は多くあり、長期滞在を前提としたインバウンド層の増加によって、国際化されたコワーキングスペースは今後も増加することが見込まれる。
8.地域活性
コワーキングスペースを地域が抱える課題解決などに活かすというタイプ。地域活性化にはさまざまな方法があるが、新しいビジネスの創造によって活力を取り戻し、街の魅力度を高め、結果的に移住や観光客を増加させる取り組みが各地で行われている。
地域にはさまざまな課題があり、それらの課題を解決するのは小規模な事業者や創業者が担うところが大きく、その意味で創業支援とも密接にリンクしているのが地域活性を種目としたコワーキングスペースということになる。
もちろん、地域の課題を必ずしもビジネスで解決する必要はないものの、継続的に解決策を提示しつつづけるためには続けることが重要であり、収益によって自立できる課題解決型ビジネスが求められることになる。
9.地域交流拠点
仕事などの利用よりも、会話や人との出会いを重視したコワーキングスペース。イベントが積極的に開催されていることが多く、地域内の男女を結びつける婚活マッチングやシニアを対象とした健康教室など、地域住民の利用を促進している様子が伺える。
公民館に近いイメージの使い方で、役割も似ている。公民館は地方自治体や地区が管理・運営することが一般的であるが、民間が運営しているところはより多彩なイベント設定を行うことで広く住民にアプローチしていることが特徴となる。
一見するとコワーキングスペースとは気づかないようなネーミングで運営しているところも多く存在し、存在を知られてないというケースも目立つ。
10.自治体・官民共創
コワーキングスペースは地方自治体による運営と、民間事業者による運営の2つに分かれるが、両者が協力して運営に携わるものが自治体・官民共創によるコワーキングスペースである。
地方自治体が持つ理念や目的を民間事業者が遂行するというスタイルが多く、指定管理者といったかたちでの運営委託(運営受託)や、第三セクターによる運営もあり得る。もともと地方自治体(行政)が保有していた施設を有効利用するためにコワーキングスペースが作られるというケースが多く、廃止された学校などの公共施設が使われることが多い。
そのことから施設面においては非常に充実していることが多く、極端に広いスペースが提供されているケースもみられる。ハードを行政が提供し、ソフトを民間が動かすというスタイルであるが、コワーキングスペース黎明期や新型コロナウイルス蔓延時には多く見られたものの、最近は減少傾向にある。
11.学び
スキルアップを目指す人を対象にしたコワーキングスペースで、仕事での利用を拒むものではないが、パーティションなどで間仕切りされた空間内で自習や勉強をすることが優先されたコワーキングスペース。
キャリアアップやリカレントなど社会人の学びというのが注目されるなか、自宅ではなかなか自習ができないという社会人を対象に、学びの場を提供するだけでなく、セミナーなどによってコンテンツも提供しているところに特徴がある。
特定の資格試験に対する勉強会を定期的に開催したり、スキルアップを対象とした財務会計などの講座、話し方セミナーといったものから、創業に関する内容を学ぶことができるコワーキングスペースもある。
毎日、何らかのセミナーが開催されており、会員はすべてのセミナーに無料参加することができるなど、学びの場所とコンテンツを融合して提供しているところが多い。
12.社会課題解決
大学などに設置されることが多いコワーキングスペースで、どちらかというとインキュベーションオフィスに近い。地域が抱える課題よりもより大きな課題を解決するという方向性での創業支援ということになる。
環境変化が急速に進む社会において、さまざまな課題が山積みとなっている。これらの課題を解決するためのビジネス、いわゆるベンチャー企業をサポートすることを前提にした施設で、研究開発などが絡むことが多いため、大学内や地方自治体の研究所内などに設置されることが多い。
いわゆる大学発ベンチャー企業というようなスタイルもこの手のコワーキングスペース・シェアオフィスから生まれていることが多い。地方自治体の強力な支援を受けることができるというのが最大の特徴といえる。
13.女性支援
女性の社会進出や創業を後押しすることに特化したコワーキングスペース。利用者だけを女性だけに限定しているところもみられ、女性が仕事をするうえでの各種サービス、サポートサービスを展開している。
保育所や託児所が併設されているケースが多く、子供を預けたまま仕事や勉強をすることが可能。地方自治体が運営するコワーキングスペースは利用料が抑えられているという特徴があり、民間が運営するコワーキングスペースは施設内環境や付随するサービスが充実していることが一般的である。 横のつながりを重視した運営を行っているところが多く、定期的なイベントやミーティングによって女性同士のネットワーク環境も提供している。一人では不安だが、誰かとつながっていることで勇気をもらえるという女性には心強い存在となるコワーキングスペースである。
14.ものづくり
3Dプリンターなどが設置され、モノづくりを行うことができるコワーキングスペースのことで、ハード面での充実が特徴といえる。さすがにMCやNCが設置されているのは地方自治体が運営する施設に限られるものの、民間のコワーキングスペースでも最新型の3Dプリンターやillustratorなどのデザインソフトが設置されていることも珍しくない。
ホームセンター内に木材カットを行うためのカット機械を貸してくれたり、家具などの組み立て用に大工道具をレンタルしてくれたりする「DIYルーム」や「加工スペース」というのが増えているが、それに似た形式であるといえる。 仕事をするスペースというよりは、作業を行うスペースという位置づけが強いため、倉庫などの広いスペースが使われることが多く、レンタルスペースとしてのイメージの方が強いのが一般的。
15.クリエイター
利用者をクリエイターに限定、あるいは優先したコワーキングスペースのこと。クリエイターといっても動画クリエイターやアーティストなどさまざまな職種・業種に分類され、いわゆる何かを生み出す仕事をしている人が対象となる。
クリエイター向けのコワーキングスペースは比較的おしゃれな印象で、カフェ形式のものや、一方で無機質なオフィスタイプで集中して作業できるように工夫されているところがある。パソコンの利用者が多いため、高速のフリーWiFiは当然として、外部接続用モニターなどを自由に使うことができるようになっている。
カフェなどが併設されていることも多く、クリエイティブな面をフォローする仕組みが用意され、定期的なイベントなどが実施され、クリエイターのコミュニティを促進する取り組みを行っているところもある。
16.コワーキング・ネットワーク
リアルに存在するコワーキングスペースをネット上でネットワーク化し、紹介するビジネス。コワーキングスペースを組織化することでリアルにおける同一ブランドでコワーキングスペースを運営する企業もみられる。また、コワーキングスペースに関する情報をインターネット上で配信し、特定のコワーキングスペースを紹介する紹介ビジネスや、コワーキングスペースを紹介し予約システムを提供することで収益化を実現しているコワーキングスペースのプラットフォームも存在する。
コワーキングスペースが全国各地に増えることで、その事実を活かしたビジネスを志向する事業者が出てきており、主にインターネット上でのネットワークを駆使して事業化に成功している。
17.多拠点・コリビング
仕事ができるワークスペースに加え、宿泊など居住空間をも提供する、いわばハイブリッド型のコワーキングスペース。研修所のようなイメージで、昼間は大広間で自分の仕事を行い、夕方になったら自炊してご飯を食べ、夜は自分の部屋で休むというように、一時期流行したワーケーションなどと同じ概念である。
短期滞在での利用もできれば、長期滞在での利用も可能。旅や観光と絡めて滞在したいというニーズもあるため、ノマド系のワーカーに人気がある。
ワークスペースの設備はシンプルなところが多く、宿泊施設と一体型のコワーキングスペースというのが大きな特徴となっている。
18.メタバース
インターネット上の仮想コワーキングスペースのこと。ネット上の部屋の中にさまざまな人が仕事をしている様子がアバターなどによって表示されており、近くの人に声をかけるとチャットが始まるといった、リアルの動きをネット上に再現しているのが大きな特徴となる。
いつもいるメンバーと仲良くなったり、バックボーンを参考にビジネス上の相談などを行うこともできる。仕事の空間というよりも、誰かと繋がっていたい、何かあったら気晴らしに声をかけたい、ほかの人が別の空間にいながらも一緒に仕事をしているという一体感を味わうことができる。
ネット環境さえあればどこからも参加できるというのも特徴の一つ。ネットからオフ会へと発展することもあり、人脈形成なネットワーク創造などにもつながっている。
コワーキングスペースのタイプについて
カオスマップの分類によってコワーキングスペースを整理してみましたが、この分類が唯一無二というわけではありません。もっと言えば、実際に利用する利用者側からすればコワーキングスペースの分類自体にそれほど意味はありません。
自分がコワーキングサービスに求めているものが場所だけであれば、ワークスペースだけがあればそれで十分だといえます。むしろ、いろいろなサービスが付加されることで利用料が高くなってしまうことも考えられ、オーバースペックといったこともあるでしょう。
とはいえ、カオスマップを眺めてみることで、ワークスペースの提供だけと思っていたコワーキングサービスが、実は様々なサービスを複合的に展開しているという情報を手に入れることができます。これらの情報の中で自分にとって有益なものがあれば、それを取り入れているコワーキングスペースを利用するのも良いでしょう。
コワーキングスペースは全国各地に増えていますが、競争が激しくなっていることもあってコワーキングスペースの閉鎖も始まっています。ゆえに、いろいろなコンセプトや特徴を持たせて運営しているコワーキングスペースが目立つようになってきましたので、長野にも今後、さまざまなコワーキングスペースが登場してくるものと考えられます。
コワーキングスペースに関する質問
コワーキングスペースに関してよく寄せられる質問をまとめてみました。
仕事以外でも利用できますか
利用用途には特に制限がない、というコワーキングスペースがほとんどです。
ただし、他人の迷惑になるような使い方、例えばミーティングテーブルを独りで占有してキャンバスに見立てて大きな絵を描いたり、利用者に見境なく声を掛けて自分が取り扱う商品やサービスを営業する行為をしたり、といったことはNGとされています。
コワーキングスペースは、いわゆるワーキングスペースなので「仕事」が中心であることは間違いありませんが、勉強をしていたり、読書をしていたり、パソコンでゲームをしていたり、さまざまなことをしている人がいますが、提供されたスペースにおいて「作業」をしているのでは特に問題があるとはいません。
とはいえ、さまざまなコンセプトのコワーキングスペースが存在するのも事実です。利用方法等を確認し、「仕事利用に限定する」といった趣旨の記述があればそれに従うことになります。見かけるケースとしては、社会人を優先し、学生(中学生・高校生)の利用はお断りしているところがありますが、これは受験勉強のためのスペースではない、ということを示すもので、学生の受験勉強を制限するものでもあります。このように、利用用途の制限はないものの、利用者を制限することで結果的に利用用途をある程度限定しているところもみられます。
学生は利用できますか
一般的なコワーキングスペースでは学生も問題なく利用することができます。コワーキングスペースにとって学生の利用は歓迎されていることが多く、特に大学生や専門学校生が利用制限を受けるということはあまりありません。
一方で、中学生や高校生などの学生は利用できないというコワーキングスペースも少なからず存在します。中学生や高校生などの学生は、自習室代わりにコワーキングスペースを利用することが多いわけですが、マナーを守らないというようなトラブルが目立つようになり、最初は受け入れをしていたコワーキングスペースも途中から受け入れを辞めるというケースが多いようです。大学生や専門学校生は創業準備や研究など、社会人と利用目的も近く、会話を通しての共同などもあり得ることからさほど問題にならないと考えられます。
なお、中学生や高校生は利用が可能であっても、保護者の同意などが必要となるケースがほとんどであることも注意が必要です。
入会金のようなものは必要ですか
コワーキングスペースによって異なります。一般的に、一時利用(ドロップイン)を積極的に受け入れているところは入会金のようなものは設定されていないことがほとんどです。初めての利用でも、利用時間に応じた利用料を支払うことですぐさま利用できるというスタイルが一般的でしょう。
一方、月額会員など月単位で利用料を支払うコワーキングスペースでは、会員制度という仕組みになり、入会金を支払う必要があるところも見られます。入会金は、主に利用カードの発行費用など管理費として使われることになり、10,000円以下がほとんどです。
入会金とは別に保証金のようなものが必要となるコワーキングスペースもあります。これも月額会員制のコワーキングスペースやシェアオフィスに多く、継続利用が前提となっている課金制度のところで見られます。利用料が何らかの理由で支払わないときに充当される性質のもので、問題なく利用していれば契約終了時に返還されます。この辺は賃貸借契約に近いイメージですので、シェアオフィス形態のところで採用されている仕組みといえます。一般的なコワーキングスペースで保証金を要求されることはほとんどありません。ただし、最低利用月数などが設定されていることがあり、6か月以上の継続利用が入会の条件といったルールを設けているところも珍しくありません。
いきなり行って利用できるのでしょうか(事前予約が必要でしょうか)
コワーキングスペースとして専門的に運営しているところであれば、特に予約なく訪問していきなりの利用も可能というところが多いです。このような利用方法を「ドロップイン(一時利用)」といいます。担当者が常駐しているところは有人受付によっていろいろと説明をしてくれますし、コワーキングスペースはカフェで仕事をするような仕組みなので、通常は説明すら必要ないことが多いです。したがって、無人のコワーキングスペースでもアプリやインターネット上で手続きすることで、初めてでもいきなり利用できるというところが多くなっています。
ただし、完全予約制のところもありますので注意が必要です。自社オフィスの片隅をコワーキングスペースとして利用しているようなところは、事前に予約しないと利用することができないという仕組みのところが多くなっています。また、有人対応ができる時間帯や曜日でしかドロップイン利用を受け付けていないところもあります。この場合には、受付スタッフがいる時間帯に訪問する必要があります。
また、初回のみ予約が必要で、一度利用した以降はいつでもドロップインできるという仕組みのところも見られます。初回に入会手続きや施設内の説明を受け、以降はドロップイン可能になります。
なお、一時利用(ドロップ)自体を受け入れていないコワーキングスペースもあります。月額利用のみに限定し、固定された利用者に利用してもらうことを前提としたもので、このような施設はいきなり行ってもすぐに利用できないことが多いです。
寝泊り可能でしょうか
ほとんどのコワーキングスペースで泊まるのは禁止されているといえます。泊まることができるコワーキングスペースは、24時間利用可能な施設となり、多くはシェアオフィスのように個室・半個室が提供されます。このため、自分専用のスペースが提供されることから寝泊りすることは可能ですが、ルールとして認められてないことがほとんどです。ただし、急ぎの仕事があって徹夜で仕事をしており、夜中に短時間の仮眠をとる、というような使い方であれば許容されると考えられます。あたかも住居のように寝泊りが常態化するのはNGというのが一般的なルールです。
実際、コワーキングスペースで仮眠をとること(机にひれ伏して)自体を禁止しているというのはあまり見たことはありません。実際、お昼過ぎになると寝落ちしている人も多く見られますが、その人を起こしてまで注意するというコワーキングスペースはさすがにないと考えられます。住居のように利用するのはできない、と考えておけば良いでしょう。
また、そのような利用のされ方を防ぐために、24時間利用可能というコワーキングスペースはそれほど多くはありません。
食べ物は自由に食べてよいでしょうか(持ち込みできますか)
食べ物や飲み物の持ち込みはほとんどのコワーキングスペースで制限されていません。飲み物は、スペース内のどこでも飲んで構わないというのが一般的です。最近はフリードリンクを導入しているコワーキングスペースも多く、ドリンクは飲み放題というところも珍しくありません。
一方、食事は持ち込みが可能ですが、食べる場所は指定されていることがあります。カレーなど匂いのするものをデスク周りで食べていると、他の利用者とトラブルになることがあります。匂いのトラブルというのは比較的多く、香水を控えてくださいといった案内を行うコワーキングスペースも珍しくありません。一室しかないようなコワーキングスペースはデスクで食事をすることを許容せざる得ないこともあって制限はないことが多いですが、一般的なコワーキングスペースにおいては食事ルームや休憩室などといった専用の部屋があり、そこで食事をとるように指定しています。
最近のコワーキングスペースは、カフェが併設されているところも多く、そのようなコワーキングスペースでは食事の持ち込みはできないものの、カフェでの料理を低価格で食べることができるという仕組みを設けているところもあります。
住所利用はできますか
コワーキングスペースの住所を使えるかということですが、おおむね半々ぐらいの割合で利用可否が分かれています。また、利用できたとしても「有料」というオプション設定になっていることがほとんどです。
住所利用というのは、自分のビジネスの所在地(住所)をコワーキングスペースの住所を使って展開していくということで、いわゆるバーチャルオフィスといわれるものです。バーチャルオフィスは、実際にはその場所にビジネスの実態がないにも関わらず、住所だけが存在し利用されているという構造になるため、いろいろなトラブルが増加しており、社会的にも問題になっている部分があります。それが理由で、利用者にとっては自宅の住所などを公開せずにコワーキングスペースの住所を対外的に公開することでいろいろなことができるため利便性が高いのですが、コワーキングスペース運営者からすればトラブルに巻き込まれるリスクを負うことになります。そのようなことから、住所利用についてはコワーキングスペース運営者の中でも賛否が分かれるところとなっています。
郵便物や荷物の受け取りは対応していますか
住所利用が可能なコワーキングスペースであれば、通常は郵便物や荷物の受け取りに対応していると考えてよいでしょう。むしろ、そうでなければ住所利用できる意味がありません。
一般的には住所利用者ごとに郵便受け(メールボックス)が付与され、郵便配達員が直接そこに郵便物を配達してくれます。利用者は暗証番号などで郵便受けを開け、自分あての荷物を受け取るという仕組みです。利用者ごとの郵便受けがない場合には、コワーキングスペースの事務局が一括して郵便物を受け取り、保管します。利用者に対してメールで郵便物が届けられたことを知らせるサービスを導入しているところもあれば、利用者から事務局へ届いたかどうかの確認が必要なところなど、仕組みはそれぞれですが、少なくても自分あての郵便物をコワーキングスペースの住所を使って受け取ることが可能な仕組みとなっています。
また、郵便物をあらかじめ指定した場所に転送してもらえるサービスもあります。例えば、自分が長野県に住んでいて、東京のコワーキングスペースに住所利用と郵便物転送を契約したとします。東京のコワーキングスペースに郵便物が届いた場合、コワーキングスペースのスタッフが長野の自宅(あるいは指定した場所)に転送してくれるというものです。転送頻度は随時や毎月末など選択でき、転送にかかる郵送代とサービス料(1回あたり500円など)が別途必要となります。このサービスを使えば、自分の住所を相手に伝えることなく、東京のコワーキングスペースの住所を使いながらそこを経由して自分の指定する場所で郵便物を受け取ることが可能となります。
郵便以外の宅配便も同様の仕組みで受け取りから引き渡し、転送などを行っているコワーキングスペースがあります。ただし、コワーキングスペースが間に入ることで、郵便物や荷物に関与する工程が増え、紛失などが発生する可能性も高くなります。そのような場合には補償関係はあまり期待できないと思われますので注意が必要です。
法人登記をすることはできますか
できるところとできないところで半々ぐらいだといえます。
法人の設立時には本店所在地を決める必要があり、自宅などではなく別の場所を使いたい場合にコワーキングスペースが手っ取り早いということもあって、利用ニーズは多いといえます。一方、一つのコワーキングスペースに複数の法人登記がされるというのは、いろいろなトラブルを引き起こす可能性もあるということで、慎重になっているコワーキングスペース運営者も多いということでしょう。
法人(会社)の経営は容易でなく、3年後の生存率は50%程度です。言い換えれば、3年以内に半数の法人が経営を辞めてしまうわけですが、その際には本来は法人を清算し、登記もしなければなりません。実際にはこのような終わりの処理が適切になされず、コワーキングスペースにすでに事業活動をしていない法人の登記が残り続けるというような問題もあります。
法人登記を行う場合には、有料というコワーキングスペースがほとんどです。登記時に一括で費用がかかるケース、登記している限り月額で費用が掛かり続けるケースなど、いくつかのプランがあります。基本的には住所利用と同じになるため、法人登記+住所利用+郵便受け取り、がセットで提供されることが多いでしょう。
途中で外出できますか
通常は問題なく外出することができます。
受付スタッフが常駐しているところ(有人受付)は、声をかければ外出可能というところがほとんどです。ただし、外出時に「利用料金をいったん精算」するようなところもありますので事前に確認が必要です。1日単位の利用料金の場合には途中退出しても利用料は変わらないことから特に問題になることはありません。一方、1時間単位などで利用料を計算するところは、退出後に戻らないときに支払いにおいてトラブルになるケースがあるため、いったん精算することがあります。清算しない場合には、外出時の時間も利用料に含まれてしまうことになるため、むしろいったん清算する方が面倒ではありますが利用者にとっては優しいといえます。
なお、料金精算に関してはドロップイン(その日だけ利用している場合)の時だけの話であって、月額で利用料を支払っている場合には問題になることはありません。
無人受付(自動化された受付)の場合には、途中退出ができないようなところも見られますが、最近はスマートフォンで入退室を管理したり、クレジットカードによる利用料の支払いと連動して入退室管理を行っているところが多いため、無人の場合でも外出できるというところがほとんどです。
注意点としては、外出時には席に荷物を置いたままにできないというルールを設定されているところが多いため、戻ってきたときにお目当ての席が空いているかどうかは分からないということになります。ただし、自分専用の固定席が設定されている場合や、席の場所にはこだわりがないという場合にはさほど気にする必要はないでしょう。
席の予約はできますか
ドロップイン(一時利用)によるコワーキングスペース利用は、その時の空き状況を鑑み自由な席に座って作業をすることが醍醐味ともいえるため、事前に席を予約することは馴染みません。一方、ミーティングデスクやブース席など、席を固定して使うことに意味のあるスペースにおいては、事前に席の予約を行い、座席をキープすることができるところもあります。とはいえ、ドロップイン利用時に座席予約をできるところはあまりありません。また、仮に事前予約できたとしても事前の決済が求められ、キャンセルする場合にはキャンセル料が発生するところが多いでしょう。
月額利用など長期利用を前提とした場合には、自由席と指定席の両方が準備されているケースがあります。指定席は、月額利用者が専用に使うことのできるデスクスペースなどで、これらのデスクは、契約期間中は自分専用のデスクとして常に予約した状態で利用することができます。コワーキングスペースというよりもシェアオフィスに近いスタイルになります。
なお、ミーティングルームやテレフォンルームなど、席というより部屋に近いものは、事前予約が必須というところが多くなっています。事前に予約を行い、決済までしてしまうところもあれば、部屋の予約だけをしておいて、利用料は使用後に支払うなどさまざまです。
内覧や体験は可能でしょうか
月額会員を募集しているコワーキングスペースでは、原則として内覧や体験(無料のところが多い)を受け付けています。実際のスペースを見てみないことには利用する方も不安なため、当然だといえます。逆に、内覧や体験をしなければ申し込みできないというようなコワーキングスペースもあります。後になって「イメージと違っていた」というようなトラブルを防ぐことが理由です。また、コワーキングスペースというよりもシェアオフィス系のところに多く見られますが、月額利用(会員)する際に「面接」のようなものが設けられていることがあります。
利用目的や利用スタイルなどを確認し、コワーキングスペース側が設定しているルールと相違ある場合には利用をお断りされることもあります。ほとんどのケースでは断られるようなことは少ないようですが、実際に断られた人は存在します。
ドロップイン主体のコワーキングスペースでは内覧や体験ができないようなところも珍しくありません。1時間程度の利用でわざわざ内覧をするというのはあまり意味がありません。喫茶店やカラオケ店に内覧という制度が存在しないのと同様、コワーキングスペースは場所自体を貸すビジネスであるため、短時間の場合にはスペースや設備がそれほど大きな問題にならないからです。住む場所を考えてみれば、中古住宅を買う場合やマンションを借りる場合には丹念に部屋の中を内覧すると思いますが、ホテルに泊まる場合には内覧はしないのと同じことです。
月額会員の場合には内覧や体験をできないというケースはないと思いますが、ドロップインの場合には内覧できないというよりもしないことが前提になっています。ホームページなどで紹介されている画像を丁寧に確認し、自分で判断するしかありません。もっとも、数時間の利用であればどこのコワーキングスペースも本質はそれほど変わらないため、内覧の必要性に乏しいというのも事実ではないでしょうか。
WiFiは使えますか
ほとんどのコワーキングスペースでフリーWi-Fiが使えます。フリーですから、利用料の中にWi-Fi代も含まれており、別途サービス料を払うということはほとんどありません。
ただし、速度はあまり期待しない方が良いです。高速Wi-Fiを売りにしているコワーキングスペースもありますが、どうしても複数の利用者がつなげる状況になると速度は遅くなってしまいます。オンラインゲームや動画などをサクサク見られるかといえば、時間帯や利用状況によって異なるといえます。
コワーキングスペースの中には有線で接続することができるLANケーブルやコネクターが準備されていることがあります。有線の場合には比較的速度を期待することができます。また、速度はそれほどではなくても切れずに安定している、というのは事実です。
セキュリティについては利用者個人に任されることになります。フリーWi-Fiは、同一のネットワークにさまざまな端末から同時にアクセスしているため、危険性も伴います。悪意を持ってネットワークに接続しているような人も紛れている可能性がありますので注意が必要でしょう。
なお、フリーWi-Fiは無料ですが、パソコンなどを借りる場合には別途レンタル料が必要になります。コワーキングスペースではディスプレイ(モニター)は無料で貸し出しをしていることが多いですが、パソコンは有料というのが一般的です。最近はパソコン自体の貸し出しをしているコワーキングスペースは少ないかもしれません。
事務用品などの貸し出しは行っていますか
ビジネスコーナーなどと称して、事務用品関連のグッズを自由に使えるコワーキングスペースもあります。大型のホチキスや大型の穴あけなどは、自宅にはないという方も多いでしょう。コワーキングスペースの中には付箋やのり、ペン、消しゴムなども自由に使えるようにしているところもあります。一方で、管理者の好意でさまざまな事務用品を設置しておいても、破壊されたり持ち帰りされたりということで、備品類は一切提供しないというところもあります。ほとんどの場合にはなくても困らないものでも、いざという時にないと困るというのが事務用品ですから、コワーキングスペースに設置されていない場合には要望を出してみるのも一つです。
複合機(プリンター、コピー機)はコワーキングスペースに寄り切りですが、設置されているところは半分くらいでしょうか。コンビニと同じように、コイン(お金)式のコピー機が設置されていることもあれば、シェアオフィスなどはコピー機専用のカードが渡され、利用した分を後払いで納めるという形式も見られます。
複合機はそれほど頻繁には使わないものの、やはりあったら便利というグッズの代表的なものでしょう。コワーキングスペース選びにおいて重視する人がいるのも頷けます。
自習室として使えますか
一般的なコワーキングスペースは、利用の用途に制限がないというところが多いです。仕事をしようが自習をしようが読書をしようが特に問題とされません。あくまでもコワーキングスペースはスペースを貸すビジネスであって、そのスペースをどのように使うのかについては利用者の考えが優先されます。
ただし、コワーキングスペースのオーナーや管理者によって利用用途が制限されているところは注意が必要です。ビジネスマンを対象とした「仕事の場所」としての活用に限定している、デザイナーなどの「仕事スペース」として利用が決められている場合には、自習で使うことはルール違反となります。ですが、実際には自習は仕事のために行っているわけであり、自習も含めて仕事と考えることにそれほどの無理があるとも言えないことから、自習を禁止しているコワーキングスペースはかなり特殊と考えてよいのではないでしょうか。
カフェやファミレスなどでは学生の勉強(自習)を禁止しているところもありますが、コワーキングスペースは場所自体を利用する権利を提供しているという点が異なります。ただし、社会人のみの利用を前提としたコワーキングスペースなどは学生の自習を禁止しているのではなく、学生の利用自体ができないルールとなっていますので注意が必要です。
実際、年末ぐらいからコワーキングスペースには学生の受験生が多く見られるようになるのですが、自習の利用者はコワーキングスペースにとってはとても良いお客さんというのが業界の中で語られていることです。自習時は基本的に騒ぐことなく、席の移動もなく、黙々と定位置で作業している人は、コワーキングスペースにとっても上客として捉えられているようです。
ちなみに、コワーキングスペースは原則として会話OKというところが多いため、ノイズが気になるという方は自習利用は可能だけれど気が散るということがあります。コワーキングスペースで自習をする場合には、サイレントルームや個室、ブースなど、周りの人が気にならずに集中できるコワーキングスペースを選ぶことをおすすめします。
スタッフは常駐していますか
従来のコワーキングスペースは受付スタッフが常駐しているところが多かった印象ですが、最近は無人受付も増えており、スタッフが常駐していない、あるいは常駐する時間が短時間になったという傾向が見られます。
多くの場合、スタッフの存在は「入退室時」に重要となるもので、それ以外はあまり影響がないということもあって、入退室の仕組みをDXなどにより整備しているところは常駐するスタッフの時間帯を限りなく少なくしている印象です。
コワーキングスペースにおいてハブとなる役目を担う人を「コミュニケーションマネージャー」と言ったりもしますが、当該スタッフが常駐しているかどうかはコワーキングスペースの活性化度に大きな影響を与えているように思われます。大きなミーティングテーブルで知らない人と仕事をしていても、きっかけがなければ会話に進展することもないでしょう。コミュニケーションマネージャーは、時に利用者と利用者を結びつけ、会話のきっかけを提供します。コワーキングスペースの利用ニーズにはさまざまなものがありますが、出会いを求めている人にとっては、できるだけ多くの人と気軽に接点を持つことができれば、より理想的です。無人のコワーキングスペースではなかなか会話やコミュニケーションが生まれにくいという傾向にありますが、コミュニケーションマネージャーが存在することで、コワーキングスペース内のコミュニケーション活動が活性化することになります。 スタッフといってもさまざまな役割を担っていますが、最近はスタッフが常駐しないコワーキングスペースが一般的になりつつあるなか、人脈や出会いを求めたいのであれば「コミュニケーションマネージャー」といった役割を持つスタッフが常駐しているところを利用するのも手でしょう。もちろん、スタッフに合わずに出入りしながら自分のペースで自習をしたいという人にとっては、スタッフが常駐していない方がメリットがあるといえそうです。
利用料金はいつ払いますか
先払いと後払い、これはコワーキングスペースによって様々です。
基本的に月額会員の場合には前払いが圧倒的に多く、一か月分を先に支払うことで月末まで利用できるといった仕組みが一般的でしょう。
ドロップイン(一時利用)の場合で、1日単位の利用料金が設定されている場合には前払いが一般的です。先に1日分を払ってしまって、あとは最後まで使うこともできますし途中で帰ることも自由という形式です。時間単位の利用の場合には後払いが多い印象です。最初の段階では利用時間が明確に決まっていないことから、帰るときになって初めて利用時間を計算できることが理由です。もちろん、最初から2時間利用などと利用者が決めて2時間分の料金を前払いし、延長した場合には延長料金を帰るときに支払うという方法も多く採用されています。
また、受付にスタッフが常駐しているかどうかによっても支払いタイミングが変わることが多いようです。スタッフが常駐していれば後払いの対応もスムーズですが、スタッフが常駐していない場合にはネット上で先に決済してしまう先払いの方が運営者も利用者もスムーズで煩わしさがありません。
支払い方法としては、現金のほか、キャッシュレス決済(クレジットカード、交通系IC、など)などが使えることが多いです。もちろん現金のみというようなところもありますが、多様な支払い手段に対応しているところが多いといえます。最近は、アプリなどを導入しているケースも多く、アプリで事前に支払って受付(入口)でスマートフォンをかざすと鍵が開くといったシステムも増えています。あるいは、スマホで入室し、スマホで退出すると自動的に利用時間が計算され、事前に登録しておいたクレジットカードから利用料が後払いで決済されるという仕組みもあります。 月額会員の場合には、クレジットカードによる継続課金や銀行口座からの自動引き落としなどが主流です。いわゆる、フィットネスジムのようなイメージです。このような支払は非常に便利なのですが、利用しなくても勝手に毎月課金されてしまうため、利用を止める場合には手続きをする必要があります。月額会員の場合には、いついつまでに申し出る必要があるなど、コワーキングスペースごとにさまざまなルールが設けられているため、しっかりと確認しましょう。
私物を置いて帰ることはできますか
指定席(固定席)のコワーキングスペースは、指定された席は契約者以外が座ることはありませんので荷物を置いてそのままにしても問題はありません(ただし、一つの席を午前中と午後や平日と週末などで共有している場合、指定席でありながら利用者が複数存在することになりますので荷物を置くことはできません)。とはいえ、デスクが周りから見えるタイプのコワーキングスペースならば、荷物を誰かに持ち去れる可能性があります。
引き出しが付いたデスクの場合で、引き出しに鍵があるならば鍵をかけて荷物をいれておいても大丈夫でしょう。また、デスクの足元にワゴンがある場合、通常は鍵をかけることができますので書類などを置いておいても問題ないでしょう。
注意が必要なのは、デスク周りの鍵はそれほど頑丈ではなく、すぐに開けられてしまうようなものもあります。したがって、いくら鍵がかけられる引き出しだからといって、貴重品を置くのは止めた方が良いです。現金などはもちろん、ノートパソコンなども危険です。
月額会員制の場合には、ロッカーが無料で使えることが多く、それなりの量を収納できるロッカーを使うことができます。ロッカーならば鍵もそれなりのものが付いているため、荷物を置きっぱなしにしても安全性は確保されているように思います。絶対ではありませんので注意が必要ですが、貴重品以外のものを置くのならば大丈夫でしょう。
ロッカーは有料オプションとしているところもあります。コインロッカーなどを完備しているところはドロップイン利用でも使うことができます。月額会員の場合でも有料設定になっている場合には、月額の利用料が設定されていることが一般的なため、ドロップイン利用時には利用できないロッカーが多くなります。
仕事で利用する場合、業種や職種の制限はありますか
コワーキングスペースごとのルールによりますが、公序良俗に反する業種以外であれば制限されるということは原則としてないと考えられます。ただし、「IT系のみ」というようにあらかじめ業種が決められているコワーキングスペースについては、それに従うことになります。見かけるものとして、「クリエイター専用」といったものがありますが、全体としては業種が決められているところはかなり珍しいと考えてください。
一方、業種とは異なる視点から出入り禁止などという制限を受けるケースがあります。よくあるのが、「利用者に迷惑をかけた」というもので、例えば、強引な勧誘などが該当します。保険営業などを行っている人が、コワーキングスペースを利用しながら利用者に保険セールを行うというもの。もちろん、話が弾んで相手も保険商品の紹介を望むようなかたちでセールスするのは何ら問題ないといえますが、手当たり次第自分から保険営業を行うような行為をすると相手からは迷惑行為として受け取られることになってしまうでしょう。
コワーキングスペースはさまざまな人が利用しており、ビジネスマッチングも期待されていることから、自分の仕事につながるようなこともたくさんあります。しかし、それをあまりに露骨に狙ってしまうと強引さが目立ち、あまり良い印象は与えないことになります。
業種とは全く関係ありませんが、ナンパ目的でコワーキングスペースを利用して手当たり次第異性に声をかけるような行為もよく見られます。このような行為は出入り禁止となってしまうため、注意が必要です。